暮らす豆

ゆるい日記など

2019-01-01から1年間の記事一覧

たからもの

1 小さい頃、わかなちゃんという子が家に遊びに来た。 わかなちゃんは弟の友だちの姉で、その日が初対面だった。わたしたちはすぐ友だちになって、つい先日こしらえてもらったばかりのわたしの部屋で遊ぶことになった。 今でも覚えている。わたしには、とて…

ドラスティック

数か月ぶりに、実家に帰っている。 今日はなんとなく、箇条書き形式で記していきます。 帰省して気付いたこと。 その1:体重が増えた。 一人暮らししている家には、体重計がない。 そのため帰省したときにしか、自身の体重を知るタイミングはない。 2キロく…

やさしくなりたい

1 夕方散歩をしながら空を見上げて、つい立ち止まってしまった。 どこまでも緩やかな夕焼けの空、そのただ中に、まつげみたいに薄い月が浮かんでいる。 目を凝らさなければ気づけない、謙虚で繊細な佇まいに、涙がでそうになってしまった。 2 何かできること…

砂糖菓子みたい

1 朝の空に白い月が浮かんでいる、いつもより大きい、と思ってよく見たら丸い形の雲だった。 朝の空は何もかもがにじんでしまいそうなくらい、凛としていた。 2 びゅうびゅう風が通る大通りを避けて、お気に入りの路地に入る。いくらか寒さがやわらいで、あ…

噛み締める

1 近ごろ「リコリス」という言葉が頭に浮かんで離れない。 リコリス。名前はかわいらしいが、思わずぎょっとしてしまうビジュアルなので知らない人は調べてみてほしい。とにかく黒々としていて、つやつやと光っている。 そして、そんな見た目であるにもかか…

両手で抱きしめる

1 冬に蛇口をひねってお湯を出すのが好きだ。 はじめは冷たい水しか出てこないが、だんだんと角が取れて、まるく優しいお湯になっていく。その感覚を手で確かめることが好きだ。 2 ここ数日、某バンドの曲をずっと聴き続けている。というより、彼らの曲しか…

毎日恒例

1 駅のホームでおきまりの「黄色い線の内側までお下がりください」というアナウンス。 電車に乗り慣れなかった幼い頃は、黄色い線がなんのことを指しているのかわからなかった。 この大きな点字ブロックを線と?いや、でも他に黄色いものはないし…… 毎日電車…

まごうことなき冬

1 そういえば昨日は雨だった。 日の当たらない路地を歩くと、冷気がくるぶしのあたりから静かに上ってくるのを感じる。 夏の暑いときにはあまり打ち水のありがたみがわからなかったが、なるほど、確かに効果があるのかもしれない。 2 会社に向かう途中、店の…

夜と

1 今日は爪を切り、部屋の掃除をした。 強く「生きたい」と望んでいるわけではなくとも爪は伸びていくし、髪の毛は抜けて新しく生えてくる。きっと「死にたい」と望んだところでその事実は変わらない。心というのは思っているより、生命力に対して無力なんだ…

実体

1 携帯のメモに「夢のコインランドリー」という文字が残っていた。 夢でしか見ない景色、起きているときには全く思い出せないのに夢で訪れると「前に夢で見た」とはっきり思い出せる、そういう景色について書こうとしたことは覚えている。 起きてから時間が…

目に見えることが全てじゃない

1 Suicaの残高が3桁になると(というより、だいたいいつも3桁なのだが)、なぜだか残額で語呂合わせをしたくなってしまう。今は734円だから、「なみよ」。意味はないけどなんだか響きのよい言葉だ。 2 ごく近しい身内を亡くしたばかりの人に会った。なんと声を…

ハロー

1 ベビーカーに乗った赤ちゃんが、安らかに眠っていた。 目尻には涙の跡がくっきりと残っている。いいぞ、あと何回でも涙を流すんだ。赤ちゃんが幼児になって、学生になって、大人になって、いつか老いても。涙の跡を残すことが許されない人間なんて、この世…

レモン色

1 ある人へ、手紙を書こうと決めた。 誰かに向けて手紙を書くことは、わたしにとって最も尊い行為のひとつだ。 思えば今までの人生、忘れてしまいたいくらい恥ずかしい手紙ばかり書いてきた。 でも、今度の手紙は、後から読み返しても納得がいくよう書きたい…

脳みそが望むなら

1 大人になってから、めっきり走ることが少なくなった。だけど大人だって、心が突き動かされたときは走っていいはずだ。今日わたしは走った。大好きなもののために。体がいくらきしもうが、知ったことはない。走る走る。 2 わたしの頭の中身は、誰も知らない…

正義の対義語

1 でろでろに溶けてしまいたい。生温い空気に身を任せ、永遠に固体と液体の狭間をさまよっていたい。 でも、冬はそれを許してくれはしない。冬はわたしに、決して揺らがない固体であり続けることを期待している。不純物が混じっていない冬の空気は好きだけど…

鏡を見つめた

1 支柱に支えられながら、下に向かって大きく枝を伸ばす木を見た。 人と違う道を選ぶことでアイデンティティを保とうとする自分の姿をつい重ねてしまったけれど、あの木にはぽっきりと折れてしまうことを受け入れる覚悟があった。まだわたしはそこまで本気に…

流民

1 世の中自分でお金をやりくりして生活するのが当たり前だが、実はすごく才能のいることなんじゃないだろうか。ふつうにできる人がうらやましいと日々思ってしまう。 そこそこお給料をもらっているはずなのに、今日も預金残高は5桁。3桁まで見たことがあるか…

馳せる

1 気がついたら、イチョウの絨毯を踏み締めて歩く季節になっていた。 実家の周りには取り立てて何もないけれど、とにかく美しい街路樹を眺めるのは好きだった。冬の澄み切った青空に、イチョウの黄色はよく映える。 しばらく会っていない家族も、同じように…

生きるために逃避する

1 教師や上司のような絶対的に正しい存在から逃げることって、どうしてこんなに爽快なんだろう。 仕事を頼まれそうな気配を感じつつ、上司が席を外した一瞬を狙って素早く身支度を整え、オフィスから飛び出す。足取りは軽く、そんな経験は一度もないはずなの…

わたしは草になりたい

1 時々、道端にへたりこんでしまいたい衝動に駆られる。 別に具合がよくないとかそういうことではないので、本当に体調が悪く休んでいる人からしまらはた迷惑な話だ。なのであまり実行に移すことはない。 アスファルトの上にぺたんと座って、道端の草や踏み…

制服を着ていた頃

1 久しぶりに面白い夢を見た。 たぶんわたしは高校生くらいで、何人かの友達と先生と一緒に教室にいる。 何の気なしに先生に「ばれん」をプレゼントしたら、ひどく喜んでいた。不思議に思って訳を聞くと、実は彼は美術の先生、しかも版画が専門なのだという…

憂鬱が友達

1 ウエストのきつい服が苦手だ。 昔からそういう服を着ると、お腹の調子が悪くなってしまう。寒いからと腹巻を巻いたときなんて、ひどかった。思い出したくもない。 腰が薄い体型だから、本当はぴったりしたスカートを履くのがよいのだ。いつも腰回りのゆる…

鼻歌でも歌いたい気分

1 ここ最近、やたらとお湯を使う日が増えた。洗い物ひとつとっても、冷たい水にふれると体力が削られてたまったものではない。 だが蛇口をひねると、やたら白濁したお湯が出てくる。有害物質か!?と恐れつつ1週間ほど濁ったお湯と共に過ごしていたが、今日…

しなやか

1 最近、わたしはよくノーベル平和賞を受賞している。 もちろん本当の話じゃない。わたしにとってのノーベル平和賞は、自分で自分に授与するものだ。例えば疲れて帰ってきた夜でもちゃんと洗い物をしたとか、死ぬほどだるいけどシャワーを浴びたとかの理由で…

ほんとうに分かることなんてたぶんない

1 冬の日というと、なぜか白くて明るい曇り空ばかり思い出してしまう。 春夏秋冬の中で、青空が浮かばないのは冬だけだ。どうしてだろう。 2 ねぎとろは不思議だ。 「ねぎとろ」からねぎを取っても大した損失はなさそうなのに、ねぎを取ってしまったら途端に…

反骨精神というほどでもない

1 高校生の頃、地下鉄にはなんてロマンがないんだろう、と考えたことがあった。 高層ビルが立ち並ぶ東京の地下深く、網の目のように張り巡らされたトンネルを走るなんて!こんなにもロマンの種を持ち合わせているのに、地下鉄はいつでもぺらっとした銀色だし…

おやすみと言わせて

1 世間では「ていねいな暮らし」という言葉が流行っている。一人暮らしを始めた当初は、わたしもていねいに生きたい!と強く思って家事を頑張るなどしていた。ただ、ものぐさな人間には向かない可能性が高い。ほどほどに、楽にこなせるくらいが万人にとって…

好きでいること?愛すること?

1 ここ最近毎日短い文章を書いているのだが、一番創作活動を楽しんでいた時期であるためか小学生時代を思い出すことが多い。 昔から、好きな人に贈り物をすることが好きだった。親に必死に言い訳をしながら、小学生女子が持つには無機質すぎるボールペンをお…

sink

1 初めて知った。雨が降りそうで降らないとき、景色は白いもやに沈むのだ。車窓から流れる夢みたいな景色を眺めていたら、いつのまにかわたしの意識も眠りに沈んでいたよ。 2 少し考えれば簡単に分かるはずのことはどうにも頭に入ってこないのに、永遠に答え…

わたしたちの場所

1 ひとりで東北へ旅行に来ている。 着いて早々に、要領の悪さを思う存分発揮してしまって凹む。現金持ち合わせておらずコンビニまで下ろしに行く羽目になり、バスに乗れずタクシーを呼び… 途中20分くらいベンチに座って呆然としてしまった。でも、ひとりだか…