反骨精神というほどでもない
1
高校生の頃、地下鉄にはなんてロマンがないんだろう、と考えたことがあった。
高層ビルが立ち並ぶ東京の地下深く、網の目のように張り巡らされたトンネルを走るなんて!こんなにもロマンの種を持ち合わせているのに、地下鉄はいつでもぺらっとした銀色だし、車窓からは蛍光灯の光が規則的に流れていく様子しか見えない。
窓から見えるのは岩肌、カンテラが放つオレンジの光を受けて走る赤銅色の地下鉄があったっていいじゃないか。各方面から反論が飛んでくるのが目に見えるようだけど、いいじゃない。ロマンがあったって。
2
2泊3日のひとり旅について会社の人に説明するのは、困難を極めた。
旅程について話すと、だいたい眉をひそめられるか笑われてしまった。
確かに観光らしい観光はほとんどしていないけれど、わたしは観光をしに旅行に行ったわけではないのだ。
くまのプーさんの言葉を借りるなら「何もしない」をするために旅に出たんだよ。
ここ3日間離れていたからか、わたしは職場のこんな些細なことにも反発して疲れているのか、と気づいた。