馳せる
1
気がついたら、イチョウの絨毯を踏み締めて歩く季節になっていた。
実家の周りには取り立てて何もないけれど、とにかく美しい街路樹を眺めるのは好きだった。冬の澄み切った青空に、イチョウの黄色はよく映える。
しばらく会っていない家族も、同じように黄色の絨毯を歩いているのだろうか。
2
自分で思っているよりも、周りの人々は自分と違うものだ。
お笑いライブに行ってみたいけど「笑うために来ている」と思った瞬間笑えなくなってしまいそう、と言ったら「考えすぎ!」と笑い飛ばされてしまった。
自分の感情が本当に自分自身のものなのか分からなくなってしまうのは、当たり前のことではないのか。
常に自分で自分を演出しているような居心地悪さを抱えているのは、わたしだけじゃないはずだけど。
3
曇りの日、都心の空はうすぼんやりと発光して見える。
いつからか、星空に対してなんとも表現しがたい恐れを抱くようになってしまった。空はぼんやりしているくらいの方が、落ち着いて見上げやすいのかもしれない。