生きるために逃避する
1
教師や上司のような絶対的に正しい存在から逃げることって、どうしてこんなに爽快なんだろう。
仕事を頼まれそうな気配を感じつつ、上司が席を外した一瞬を狙って素早く身支度を整え、オフィスから飛び出す。足取りは軽く、そんな経験は一度もないはずなのに授業を抜け出して屋上へ向かう高校生のような気分になった。
褒められることではないけれど、窮屈な日々なんだからささやかな反抗くらい許してほしい。
2
米を研ぐことが好きだ。
澄んだ水をボウルに流し込めば、一瞬で綺麗な乳白色に染まる。ざかざかと小気味良い音を立ててかき回しているうち、水はどんどん透明に戻っていく。
目に見える成果を提示してくれる素直さは、いつも少しの疲労と達成感をもたらしてくれる。
3
猫背気味なのを気にしてぐっと背中を反らしてみたら、肺が大きく開いてたくさん空気が流れ込んできたように感じた。確かに日々人に迷惑をかけず生きていきたいと願っているけれど、何も酸素までケチることはないだろう。