暮らす豆

ゆるい日記など

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

創生

1 自分という人間のいろいろな部分がパラパラと、まるでトランプカードのように剥がれ落ちていくのを感じる。 必死にひとところへかき集めて鉄の杭を打ちつけないと、すぐにバラバラになってしまいそうだ。 カードの1枚1枚をどうやっても「自分」であると信…

すぐそばに広がる宇宙

1 休日に、ひとりでホットケーキを焼いた。とても簡単に炭ができた。 料理が下手なことはわかっていたが、まさかここまでとは、恐れ入った、などと独りごちる。 2 真夜中タクシーに乗りながら空を眺めたら、南の空にまばゆく光る星が見えた。 星の光は何百年…

All in the golden afternoon

暗い部屋、ランタンの灯りだけで、本を読む。 加湿器から絶え間なく聞こえる、ぷつぷつという水音。 たぶんわたしが生きていくのに必要な刺激は、これくらいで十分なのだ。輝かしい成功も、弾けるような喜びも、この部屋で得られるじんわりとした幸福には敵…

煙の味はわからない

1 久しぶりに、きわめて久しぶりに、公衆電話を使っている人を見かけた。そうして、久しぶりに公衆電話の存在を意識した。 携帯電話が普及してから、公衆電話はほとんど使われなくなった。 かく言うわたしも、携帯電話の進化と肩を並べて成長してきた。公衆…

爪先で歩く

1 ショッピングモールにエスカレーターがあることは、みな知っている。でもそれが螺旋階段にそっくりであることに気づく人は、そう多くないのではないだろうか。少なくともわたしは20年余り生きてきて今日初めて気づいた。 螺旋階段の構造が、昔から好きだっ…

灰白色

まるで鉛筆で描いたみたいな顔の女だ、と思う。 なにしろ眉毛から目、鼻、唇に至るまでパーツの全てが薄く、ぼんやりとした印象なのだ。 冬の昼、色のない公園を彩るのは曖昧な潮の香りのみ。ただ歩いているだけで、手に持った缶コーヒーはすぐにぬるくなっ…

転げ落ちはしない

1 満員電車から満員電車へ乗り換えるときに、ああ出荷されてしまう、といつも思う。 人の波に押されながら、みな同じ方向を目指して歩く。そこには見えない力が、抗うことのできない力が働いているんじゃないか。 薄汚れたホームの片隅に目をやると、黄色く…

乾きたいのに渇いてしまう

ぱきん チョコレートバーにも種類がある、と彼女は思う。歯に触れると軽快に砕けるものと、へなへなと沈んでゆくもの。 でも、どちらも舌の上で転がせば柔らかくとろける、だから結局同じものなのかもしれない。 奥歯ににぶい痛みが走る。彼女はなんでもない…

ただしくいきる

わたしは嘘がきらいだ。 心の底から何かに熱中している人を見ると、大げさに感動してしまう。なぜならそこには絶対に嘘がないから。 嘘をきらい続けることでわたしは毎日ぎりぎりと自分の首を絞めている。 完全にひとりでいるとき、そこには真実しかない。わ…

愛すべきもの

1 母に「ハーゲンダッツ買ってあげるね」と言われた。 小さかった頃はハーゲンダッツなんて贅沢品で、よっぽどのことがないと買ってもらえなかった。何度もねだったのでよく覚えている。 何の迷いもなくハーゲンダッツを買ってもらえるほど、わたしは母から…

揺らぐ

1 久しぶりの長い休日。 わたしは、くまのプーさん流に言うなら、「何もしない」をしている。まさに満喫している。 前に進もうとしない人間は駄目だ、とわたしなのか他人なのかわからない声に責め立てられるけれど、それでも動かない。強靭な意志を持って休…

終末

1 大晦日はいつも、不思議と心がざわざわしてしまう。 風が強くて、木が大きく揺れる音がするものだから、その気持ちはさらに強くなってしまった。 いつか、わたしたちが当たり前に信じているものがばらばらに崩壊してしまうのではないか。今まではたまたま…