まごうことなき冬
1
そういえば昨日は雨だった。
日の当たらない路地を歩くと、冷気がくるぶしのあたりから静かに上ってくるのを感じる。
夏の暑いときにはあまり打ち水のありがたみがわからなかったが、なるほど、確かに効果があるのかもしれない。
2
会社に向かう途中、店のショーウィンドウに映るわたしの姿は、なんだかむくむくとしている。
太った、という意味ではない。分厚いコートを着込み、ヤクの毛からできたあたたかいマフラーを巻いて、なんだか身体がふくらんで見えるのだ。
ふと目にとまった街路樹は、当たり前のごとく全て葉を落としている。つまり、はだか。
たくましいな、わたしと違って!と思いそうになるけど、きっとそうではない。木は寒さをあまり感じない、わたしは感じる。たぶんそれだけのことだ。
3
走って走って、走って、発車ベルぎりぎりで電車に飛び乗る。空腹のためか急に運動したためかめまいがしてドアにもたれかかると、吐く息でガラス戸がみるみるうちに白く曇った。身体を押し付けている部分は透明なままなので、ちょうどわたしの身体で型をとったみたい。朝からちょっと愉快な気持ちだった。