やさしくなりたい
1
夕方散歩をしながら空を見上げて、つい立ち止まってしまった。
どこまでも緩やかな夕焼けの空、そのただ中に、まつげみたいに薄い月が浮かんでいる。
目を凝らさなければ気づけない、謙虚で繊細な佇まいに、涙がでそうになってしまった。
2
何かできることがあったかもしれない。そう感じたときの心境は、なんとも形容しがたい。
己の無力さ、自分の驕りに対する呆れ、いろんなものが束になって襲いかかってきて、ため息をつく他なくなってしまう。
今からでも遅くないと信じて、せめて言葉だけでもかけてあげられる人間でいたい。安全地帯からただ哀れんでいるだけで終わりたくない。