すぐそばに広がる宇宙
1
休日に、ひとりでホットケーキを焼いた。とても簡単に炭ができた。
料理が下手なことはわかっていたが、まさかここまでとは、恐れ入った、などと独りごちる。
2
真夜中タクシーに乗りながら空を眺めたら、南の空にまばゆく光る星が見えた。
星の光は何百年も、もしかしたら何千年何光年も昔に放たれたものかもしれないのに、その瞬きはやたらと健気だった。いまちゃんとわたしの目に届いている、たしかに受け取ったぞ、と念じる。
3
渦。渦。見渡す限りの、渦。
身体はとっくに消滅していて、意識だけになったわたしは空高くを漂っている。
すべてがゆっくりと動くこの世界で、わたしはひとりきりだ。
でも心許ない、とは感じない。なぜなら、わたしはもうこの大空の一部だから。
わたしも世界も、すべてが溶けあってひとつになったように思えたその瞬間、ふっと目を覚ました。
そしてぼんやりとしたまま悟る。空だと思ったあの世界は、人の心の中だったのだ。
きっと誰もが心の中に、小さな宇宙を持っているのだろう。あの大空はきっと、その中のほんの一部でしかないのだろう。
THE NOVEMBERS-救世なき巣