煙の味はわからない
1
久しぶりに、きわめて久しぶりに、公衆電話を使っている人を見かけた。そうして、久しぶりに公衆電話の存在を意識した。
携帯電話が普及してから、公衆電話はほとんど使われなくなった。
かく言うわたしも、携帯電話の進化と肩を並べて成長してきた。公衆電話を使ったことなんてたぶん1,2回しかない。
駅の片隅、少し薄暗いところにひっそり佇むその姿を見て「窓際族」という言葉を思い出した。そして勝手に切なくなってしまった。
2
これはあんまり自慢できることではないのだが、喫煙所が好きだ。
わたしは喫煙者ではない。なぜ好きなのかといえば、そこがわたしにとっての非日常の象徴であるからだ。
ひとりでは行かない、好きな人といる時しか行かない場所。何もせず黙って立っているだけ、でもそこで過ごす時間は決して上書きされないから、喫煙所はわたしにとってずっと幸せな場所であり続けている。
だからわたしは、喫煙者と付き合いたいな、などと性懲りもなく考えている。