丸く掃かれた四角い部屋
11/13
ふと思いついて、今日からある試みを始めることにした。
1日数分だけ、目の前に見えるモノの気持ちに全力でなりきってみる。
今日はトイレの脇に置かれている、掃除用ブラシになりきってみた。
選んだ理由は、絶望のあまり職場のトイレの床に座り込んで(汚いね)膝を抱えることが多々あって、隅にたたずむその姿になんとなく仲間意識を感じていたから。
便座に座り、まずはひたすら掃除用ブラシを見つめる。
見えてくる。
埃が踊る床が、人の足が、そして誰もいなくなったあとの暗闇が。
そして、香ってくる。ほとんどの時間は芳香剤に覆い隠されているけど、ふとした瞬間たちのぼる「あまりよろしくない」におい。
身体の芯がじっとりと湿っているのを感じながら、私は、ただそこに立っている。
しばらくしてトイレに座る人間と掃除用ブラシの構図が意外と似ているということに気がつき、ちょっと愉快な気持ちになった。縦に長いし。まあ、なんだか湿っているし。
楽しかったので、明日からも続けてみようと思う。明日は何になろうかな。