波紋
5/21
木曜日。寒い。
寒すぎて長袖タートルネックの服を着て、それでも寒いので上にパーカーを羽織った。3月上旬の匂いがする。
昼間はやたら窓の外が白かった。雪の日みたいだ。
もう今年雪は降らないだろう。たとえ年末に雪が降ったとして、それはもうこれまでの冬のものではない、私が全く知らない冬のものだ。そんな当たり前のことが悲しい。
鏡に向かって「お前は誰だ」と問い続けると、しまいには頭がおかしくなってしまう。という都市伝説を聞いたことはあるだろうか。
私はそれを試したことはないが、あながち間違いでもないのではと思っている。
私はひとりのときは、しょっちゅう自分の心に誰何している。私は一体どういう人間で、何を望んでいるのか。
本来あるべき自分自身に還ることが私の夢であり、そのためには自分自身が何を考え何を望むのかを絶えず見つめる必要があるからだ。
宗教じみた言い方になってしまった。そう、つまり私は常日頃から心の中で鏡を見つめているのだ。
以前はそれでよかった。生活を送る中で欠かせない人とのつながりが鏡と私とを引き離し、くだらないことで簡単に笑うことができた。
もちろん鏡に向き合う時間も必要だったけれど、いつまでもそうしてはいられない。世界はぼーっとたたずむ私を待ってはくれないのだ。
でも、人に会わなくなって時間のバランスが崩れてしまった。必然的に、鏡の前に立つ時間が増える。
ずっと鏡を見続けていると、自分自身の存在が揺らぎはじめてしまう。そして、だんだん鏡に映る自分が歪んで見えてくる。
だが、液晶を通してしか窺い知れなくなってしまった他人の生活はいつも丁寧で正しい。
鏡も液晶も見るのをやめればいいのに、どうしても目を離せない。
自分らしく生きる、というのは私にとって永遠のテーマになるかもしれない。
こんなところで歪んだ自分に幻滅して腐っている場合ではないのだが、どうしても心が落ち込んでしまう。うーむ。
今日の一曲:
Opera House/Cigarettes After Sex
https://music.apple.com/jp/album/opera-house/1215408950?i=1215409264