夢を見たい
6/18
木曜日。気分が晴れない。
いつも鬱のかたまりが側で見守っている。それは埃っぽい緑色でぺたぺたしていて、私の身体よりはるかに大きい。
少しでも嫌なことがあると、それは大きな口を開けて私を呑み込む。それに取り込まれると急に身体をまっすぐに保つのがしんどくなり、人の声があまり聞こえなくなる。
ふんっ、と気合を入れればきっと振り払えるのだろうが、その一呼吸がうまくできないため抜け出すのが難しい。どうしても抜け出さざるを得ない状況になってからしか、動くことができない。
でも、一度抜け出してしまえば意外と簡単に日常生活が送れてしまう。
元気なときの私はそうでない自分をどうしても信じられないし、その気持ちが過去自分のものであったと認められない。
嘘をついているわけではないのに、オオカミ少年の気分だ。確かに「襲われた」という事実は存在する。だが誰かが心配して声をかけてくれる頃には、その恐怖も苦しみもどこかに行ってしまっている。
私はこれを書いているいま、かたまりの中にいる。この重苦しい気持ちも、きっと一度抜け出してしまえば忘れてしまうことだろう。毎日がこんな風なので、人生が連続しているように思えない。まるでいろんなかけらをつぎはぎして生きているようだ。
解釈
6/17
水曜日。時間ができるとすぐ寝てしまう。
仕事中ふと何かが気にかかって、でもその実体がなかなか頭の中で掴めない。
しばらく苦戦して、ようやくそれが先日考えた物語の断片であるということを思い出した。
長い散歩をした時に思いついた、あまり救いのない話だ。
散歩をしていると初めは自分の人生のことばかり考えてしまうが、だんだんと意識が現世を離れて見知らぬ世界にたどり着く。
だけどそれらは非常に断片的なので、物語として完結することはほぼない。一度くらい作品として身体の外に出してみたい。
心の健全度合いが日によって30%〜70%くらいのところを推移しているが、母と水曜どうでしょうを見ている時間だけは安定して80%くらいになる。
嘘のない世界(実際私には判断しようがないので、「嘘のなさそうな」の方が正確か)は、やっぱりいとおしい。
今日の一曲:
ネコちゃんになっちゃうよ~/クマリデパート
三等星
6/16
火曜日。なぜかいきいきと仕事をした。
仕事をするのは嫌いではない。誰かの役に立てている、ということを実感するのはすごく好きだ。でも、ときどき誰の役にも立ちたくない!身もふたもないことだけして生きていきたい!という気持ちが心の奥底から湧き出してくる。
自分を発信したい気持ちと誰にも自分を知られたくない気持ち、人の役に立ちたいけど何の役にも立たないことをしたいという気持ちがそれぞれ拮抗している。ふとしたことでバランスが崩れて、だから今私は仕事を頑張れているという気がする。
線を引いて白と黒で綺麗に分けられることなんて、この世に存在しない。頭ではそう分かっているけど、なかなか自分自身のゆらぎを認められない。
冷やご飯が好きだ。
ほかほかして自信に満ち溢れているご飯と違って、なんとなく不安そうなので。
携帯で乗り換えを確認しながら駅のホームを歩いていたら、思いっきり知らない人の足を蹴っ飛ばしてしまった。
その人も手に携帯を持っていて、だからか分からないが「すみません!すみません!」と必死に謝ってくれた。私の口からは、頼りない「あ、すみません…」しか出なかった。
人の足を思いっきり蹴ったことなんてもちろんなくて、かなりうろたえてしまった。いや、何を書いても言い訳にしかならないだろう。私は全然優しくない、優しかったことなんてない。
今日の一曲:
color/KEYTALK
ふてくされた大人
6/15
月曜日。なぜか右足が重だるい。
今まであまり意識したことがなかったけど、私は電車に乗って移動するのが好きだ。いついかなる時でも、私たちは電車に乗りさえすれば自分であることを一時的にドロップアウトして「乗客」になりきることができる。何者かでいることを求められない自由さ。
乗客になりきることで、私はかえって自由な心で考え事ができる気がする。
マスクは嫌い。なぜならすぐに息が苦しくなってしまうから。
でも最近、口元が見えなくなることを逆手に取って口パクで歌うのが趣味になった。
うっかり下手くそな歌が声に出ていそうで怖い。でも楽しくてやめられない。
今日の一曲:
せかい/ズカイ
https://music.apple.com/jp/album/%E3%81%9B%E3%81%8B%E3%81%84/1487904702?i=1487904710
青いクジラ
6/14
日曜日。程よくじめじめしていい気候だった。
へんな夢を見た。行ったこともない街の知らない家に引っ越していく夢。
津駅、というところで地下鉄を降りた。ホームはまるで古い水族館みたいに、錆がところどころ浮いた安っぽい水色で塗装されていた。
いきなり場面が飛んで、いざ自分の部屋のドアを開けようという場面。隣の部屋とドアがやたら近かったので狭い部屋を想像していたら、かなり広い。一人暮らしには十分すぎるくらいの広さ。そして何より、玄関から入って突き当たりの壁が全面窓になっていて、青々とした海?湖?が見える!
海か湖かはっきりさせたくてGoogleマップのアプリで現在地を確かめると、そこはカジキマグロの口の先端みたいな形をした半島だった。つまりは海、どこまでも広がる海!
嬉しくなって、iPhoneでパノラマ撮影をした。なんと水面近くに来ていたクジラが映って、仰天した。なんて素晴らしい部屋なんだ。
いつのまにか近くにいた母に「でも私東京で仕事してるからここには住めないよ」と言うと、「いいじゃん、好きな時に仕事やめて住めば。7万くらいだし、引っ越してくるまでは家賃出してあげるよ」と。
そんな虫のいい話があるか!というよりも、そんな甘えた娘でいてたまるか!と思った瞬間目が覚めた。
津駅はどうやら実在するらしい。もちろんその周辺は、カジキマグロみたいな形をしていなかった。
夕暮れどき散歩をしていると、なんだか懐かしい匂いがした。夕飯とか砂埃とかではなく、名前も顔も思い出せないけどその昔好きだった男の子の匂いだ。たぶん。
匂いの記憶は、映像や音のそれとは別の場所に保管されていると思う。呼び出すのが非常に困難だし、いざ再会したとしてもライブラリからその匂いを取り出せる可能性はとても低い。
彼は元気にしているだろうか。
日々にゆられて/泉まくら
歯と指
6/13
土曜日。頑張って起きていた。
元気に過ごせる日とそうでない日、何が違うんだろうな。今日は元気だった。
やらなきゃいけないことを8割くらいは片付けて、映画を2本見た。1日に映画を複数見ると頭の中で話が混ざってしまいそうで不安だったけど、そんなことはなかった。
人はなぜ生きるのか、というありふれている割には答えが見つからない問いを掴んだ。いつもそういうことを考えていたいけど、そればかり考えていると頭がおかしくなってしまう気がする。
大雨の降る昼間、電気を消してずっとうずくまっていたい。ずっとずっと。それだけで許されていたい。
今日の一曲:
Altale/削除
https://music.apple.com/jp/album/altale/1079963954?i=1079963975
リモコンで回る世界
6/12
金曜日。がむしゃらに駆け抜けた。
途中で変なスイッチを押してしまったみたいで、ずっとテンションが高かった。
出勤時は、この世の終わりみたいな顔をしていたくせに。
たった数時間前の自分の気持ちが分からない、同様に数時間後の自分の気持ちも分からない、というのは万人に共通の感覚なんだろうか。
他人と人格を交換して他人の感覚を経験してみたい、とよく思う。ただ人格を交換したら自我も一緒に移動してしまうだろうから、あんまり意味がないのかもしれない。
夏だ。何もしていなくても、身体全体がじっとりと湿る夏がすぐそこまで来ている。それこそ手を伸ばせば簡単にぶつかるくらいまで。
私はクーラーをかけた狭い部屋にこもって、夏を締め出すのが好きだ。そうすることで、締め出しているにもかかわらず私たちの生活の中央に堂々と鎮座する夏を感じるのが好きだ。
ただ夏を締め出すためだけの、クーラー以外何もない部屋があればいいのに。フローリングの冷たい床に身を投げ出して、ただひたすらに天井を見つめたい。
今日の一曲:
Last Train/Travis
https://music.apple.com/jp/album/last-train/1458138330?i=1458138347