青いクジラ
6/14
日曜日。程よくじめじめしていい気候だった。
へんな夢を見た。行ったこともない街の知らない家に引っ越していく夢。
津駅、というところで地下鉄を降りた。ホームはまるで古い水族館みたいに、錆がところどころ浮いた安っぽい水色で塗装されていた。
いきなり場面が飛んで、いざ自分の部屋のドアを開けようという場面。隣の部屋とドアがやたら近かったので狭い部屋を想像していたら、かなり広い。一人暮らしには十分すぎるくらいの広さ。そして何より、玄関から入って突き当たりの壁が全面窓になっていて、青々とした海?湖?が見える!
海か湖かはっきりさせたくてGoogleマップのアプリで現在地を確かめると、そこはカジキマグロの口の先端みたいな形をした半島だった。つまりは海、どこまでも広がる海!
嬉しくなって、iPhoneでパノラマ撮影をした。なんと水面近くに来ていたクジラが映って、仰天した。なんて素晴らしい部屋なんだ。
いつのまにか近くにいた母に「でも私東京で仕事してるからここには住めないよ」と言うと、「いいじゃん、好きな時に仕事やめて住めば。7万くらいだし、引っ越してくるまでは家賃出してあげるよ」と。
そんな虫のいい話があるか!というよりも、そんな甘えた娘でいてたまるか!と思った瞬間目が覚めた。
津駅はどうやら実在するらしい。もちろんその周辺は、カジキマグロみたいな形をしていなかった。
夕暮れどき散歩をしていると、なんだか懐かしい匂いがした。夕飯とか砂埃とかではなく、名前も顔も思い出せないけどその昔好きだった男の子の匂いだ。たぶん。
匂いの記憶は、映像や音のそれとは別の場所に保管されていると思う。呼び出すのが非常に困難だし、いざ再会したとしてもライブラリからその匂いを取り出せる可能性はとても低い。
彼は元気にしているだろうか。
日々にゆられて/泉まくら