なんの前触れもなくチョコレートをもらった話
なんの前触れもなくチョコレートをもらった。
コンビニで買えるけどちょっと高くてお洒落な、自分では買わないチョコレートだ。
何せ気の置けない間柄なので私はごく普通に戸惑い、慌ててしまった。なんか貸しあったっけ?
別にないよ、と言われた。今日仕事忙しいんでしょ、とも。
それからずっと、胸の奥底に何かが焦げついているのを感じていた。
疲れと苛立ちと愛情がないまぜになった、甘く香ばしい何か。
今私たちの間にあるのは恋愛とか友情とかではなく、忙しい状況に放り込まれた人間たち特有の不可思議な結束なんだと思う。
それはべっこう飴のように茶色く固くなって、爪を引っかけても剥がれない。
煙をあげてさらに黒く染まってゆくそれをただ見ながら、私はなんだか歯がゆい気持ちだった。