MAPA「Satie」がヤバいという話。
(私のブログを常日頃読んでくださっている方はお分かりかと思いますが、この後にはディスクレビューではなく“感傷”の記録が続きます。ご了承ください)
何はともあれ、まず音源を聴いていただきたい。
ずっと聴いていたくなりませんか?
酔っ払った帰り道、意味もなく涙を流したこととか。
おだやかな速度で走る車の中から、ずっと飽きずに外を眺めていたこととか。
そんな他愛ない記憶が、実体を持たないまま頭蓋骨を通過していく。
おでこから入って、後頭部から抜けてどこかへ消えていく。
いつかは確かに自分のものだった記憶、それが通り抜けていくということはつまり、自分の一部だったものが還ってくる(ただしまた出ていく)ような。そんな感覚。
陸の上で生まれた私たちは、いつの日かこんなふうにして海に還り、そのあと天に昇っていくのかも。
「Satie」は、不思議な曲だ。
海のように風のように、ゆらゆら揺らいでいるのに、決して生きることから遠ざかっていない。
両足は(海に浸かっているかもしれないけどそれでも)、きちんと大地を踏みしめている。
「Satie」を聴いている時間だけ到達できる世界がある。
私は本当にしょうもない人間だし、そんな私を生かしてくれる世界だってきっとかなりしょうもない。
そういう、心の奥に巣食っている自明のあきらめみたいなものを両手で掬い取ってそっと海へ流してくれるような、これは言葉にするなら「やさしさ」? が、あると思う。
揺れるカーテンの向こう側から眺めた“生”を、確かに肯定してくれる。
分類上(こういう分類好きくない!けど)アイドルとされるグループがこういう曲を発表すること、すごく大きな意味を持っていると思っていて……
明るくてPOPで味付けの濃い曲が背中を押してくれることだってある*1。
でも、音楽って全然それだけじゃない……これだけ少ない音数で世界の広がりとか、生きることとか、やさしさとか、とにかくいろいろなことについて考える時間を与えてくれる。
「楽曲派」なんて括りがなくてもアイドルは、MAPAはアーティスト!
ありがたいことに好きなだけ音楽を持ち運んで聴ける現代、アーティストが見せてくれる色とりどりの(時には黒や灰色の)世界に報いるため、私はまだ生きたい……たいへん暗い性格をしている自覚があるけど、全然死にたくないな!
*1:現に私はこころがしんどい時ほど電子ドラッグ系の曲を聴いてる。