暮らす豆

ゆるい日記など

旅のしおり

9/22-23

 


そもそもの話井の頭線が好きで、なぜかというと思いきり街中を走ってくれるから。高架から広い空を眺めるのも悪くないけど、人々の生活の隙間を縫って進む電車に乗っていると、まるで映画を見ているような気持ちになれる。

 


乗り換えのときは、いつだって余計なことを考えてしまう。

自分を頭の上からふっと眺めた時、ちっぽけなくせに、ちっぽけな溝にはまり込んでもがいているように見えた。そうして涙で視界がにじんだ。スイカをかざしてホームへ向かう。

 

 

21時半に会社を出られた。ここ最近の私からしたら結構奇跡だ。

会社の近くの中華料理屋にひとりで入って、麻婆丼を食べた。一緒に小さな卵スープがついてきた。

普段なら、絶対に中華そばを食べる。なぜなら、冒険してみよう!と思わないまでに美味しいのだ。でも私は今日、珍しく冒険した。辛いものが苦手なのに。

すぐに運ばれてきた麻婆丼をれんげでひとすくい、口に運ぶと、あら意外にも辛くない。そしてやっぱりおいしい。

調子に乗って食べ進めていたら、突然限界が来てびっくりした。口の中の皮膚全部が「無理!」と叫んでいる。ちょっと涙目でハフハフする。鼻水まで出ている。

藁をも掴む思いでたまごスープをすすると、なんとも言い難い味、あえて言うならそう、優しい!あれはまさに優しさの権化だった。たまごスープが勇者パーティにいたら、絶対僧侶だと思った。卵色をした僧衣まで頭に浮かんだ。麻婆丼はきっと、強いけど結構意地悪な魔法使いだろう。

 


なぜ今日私は冒険して、わざわざ麻婆丼を食べたのか?

それは、変わろうと決意したから。絶対今年度中に転職してやるぞ、いつまでも流される自分じゃいられないぞ、と。

次上司と2人きりになったら切り出すつもりだ。そんなことじゃ甘い!と言われるかもしれないけど、甘くない!決意を固めただけで偉い!そう思わないと明日の朝も布団から這い出すことができなくなってしまう。実際今日は泥まみれの気持ちで家を出た。自責の泥沼は尾を引くからつらい。もう自分を責めたくない、でもそれは無理なのでせめて元気な時くらい自分で自分を褒めていかないと。

ああ。たまごスープくらいの優しさがほしい。たまごスープくらい自分にも他人にも優しい人間になりたい。