呪われないで
9/12-15
久方ぶりの休みだ。
家を出て冷たい雨に降られながら、あ、わたしが戻ってきた、と思った。
本当の自分は奥の奥に押し込めて、仕事をするのに必要な部分だけ使っていた。それらが解き放たれて、五感がふわふわと頼りない足取りで帰ってくる。
やりたいことしたいことがあふれ出して気持ちがわくわくするけど、身体がうまく追いつかない。たくさん眠った。
夜、外に出ると半袖の腕に冷たい風がすっと触って、すごく寂しい気持ちになった。
今まで私は秋の涼しさとそれが呼び起こす情緒を愛していると思っていたけど、もしかしたら秋が苦手だったのかもしれない。
自己嫌悪に塗れて泥を吐く。吐いた泥の中をまさぐると、そこには足の小指の爪ほど小さな自意識があった。
私の自己嫌悪のはじまりは、たぶん、「悪いことをしたら、悪いことをした人らしく振る舞わなくては」という強迫観念。
誰かに怒られたとき、怒られたことを恥じたり悲しんだりする自分とは別に、「落ち込んでいる表情や反省している素振りを相手に見せなければ」と思う自分がいた。怒られたということは、つまり私が誰かに迷惑をかけたということ。私がへらへらしていたら、迷惑をかけた相手に嫌な思いをさせることになってしまう。そう思うと同時に、そのことに気づいている自分がどういうわけか後ろめたくもあった。
そういうわけで私は、相手から見えないように自分の頭をぽこぽこと殴って、わざと悲しい顔をするようになった。その姿を人に見られまいとするあまり、いつしか自分で自分の頭を殴っていることを忘れてしまい、相手に殴られたから頭が痛むのだ、殴られるほど悪いことをするなんて私はなんて最低なんだ、と思うようになってしまった。
私は私に、呪いをかけていたんだと思う。誰かを傷つけるのも自分が傷つけられるのも怖くて、必死に傷ついた振りをしていた。そしてその傷はいつのまにか、本当の傷になっていた。笑っちゃうくらい情けない。私は自分で作ったこの傷たちに、何をしてあげたらいいのだろう。これは本能的に感じていることだけど、この傷はたぶん他人にしなだれかかったところで無意味、自分で立ち向かうことでしか治せないのだ。