地下室の窓
9/4-5
「星の王子さま」を電車で読む中学生を見た。
自分が通ってきた道、自分が通らなかった道が一緒くたになって眼前に広がる。中学生だった頃、星の王子さまを初めて読んだ頃、あの頃何かひとつでも違う選択をしていたら、私はここにいなかったのではないか?
中学生に戻ることはできないけど、10年ぶりに星の王子さまを読んでみようかな、と思った。その先に新しい道が広がっているかもしれないから。
世界全部を壊してしまいたい、でなければ自分をめちゃくちゃに壊してしまいたい、と思う夜はあるだろうか。私にはある。
もがけばもがくほど破壊衝動は強まるので、耳に突っ込んだイヤホンから馬鹿みたいに大きな音で激しい曲を流して(音漏れしていませんように)、自分の苦しさをその轟音に溶かす。
なんとか家に帰り着いたら、服を大量に持ってコインランドリーに向かった。
大きな袋を持って歩いていると、夜が私の身体をすっぽり覆って、くるぶしのあたりまで隠してしまった。その感覚が気持ち良くて、洗濯が終わるのを待っている間はずっと近所を散歩していた。街灯が煌々と照らす道には、ほとんど人影がない。それが不思議で、なんだか世界の底に来てしまったみたい、と思った。空気を読むことも利害を考えることもしなくていい、自分ひとりの世界。私はいま、たしかに自分を癒しているのだ。
世の中は積極的で活動的な人間を求めていて、だからそれに抗うように引きこもりたくなってしまうのは自然なことだ。ひとりで過ごしたいと思い続けているけど、私は他人と過ごすのが嫌いなわけではない。ただ、ひとりの時間と他人と過ごす時間が釣り合っていればいいというだけ。ひとりが多すぎても、人と過ごしすぎても、私は心の調子が悪くなってしまう。
今は人と過ごすことばかり求められているからか、一旦心ゆくまでひとりで過ごしてみたいと思っている。昼過ぎに起きて、布団の中で本を読んで、近くの街まで散歩をして、映画を観て、大好きな音楽を聴いて。