暮らす豆

ゆるい日記など

明かりはつけたまま

私は、丸い窓のへりに座っている。円の直径は私の身長よりも大きくて、向こう側にはどこまでも暗くて全ての光を吸収してしまう闇が広がっていた。

今まで四角い窓や三角の窓、星型の窓なんかも覗いてみたことがあった。それらの向こうには人が溢れていたり、美しい自然が広がっていたり、いい匂いのする食べ物がたくさん並んでいたりして、そのどれも私は好きだった。

そう、確かに好きだったけれども、自分自身を自分自身としてあるがまま受け止められるのは、こうして真っ暗な世界を目の前にしているときだけだった。

私は床へ飛び降りて、部屋の四方を見渡す。四角い窓、三角の窓、星型の窓には木の板がおざなりに打ち付けられていて、向こう側を覗くことはもう叶わない。

床には私がこれまで生きるために必要としてきた食べ物たちの残骸だけが散らばっていて、それを見る限り私の命は長くないようだ。

無造作に転がっていたピーナッツバターの瓶を手に取って蓋を開け、人差し指を突っ込む。すくい取って舐めたそれは冗談みたいに甘くて、ほら、やっぱり私はもう生きられない。

よし、と気合いを入れて戸棚の奥から引っ張り出した鏡にはひびが入っていたけれど、かろうじて自分の顔を確認することはできた。歯の欠けた櫛で髪を梳いて、これでおしまい。丸い窓のへりに立った私は、すうと息を吸い目の前の闇に向かって倒れ込んだ。