誰も知らない歌
5/5
ここ最近、自分の感じたことや思ったことを言語化するのが難しい。明確に頭の中にイメージはあるのだが、その像は少しでも言葉で表そうと試みた途端にぼやけて消えてしまう。
もともと言葉を使うこと自体は苦手ではなかったつもりだが、むしろ今まで言葉選びをさぼりすぎていたのかもしれないな。
中途半端な言葉で片付けてしまいたくない世界が、少しずつ胸の裏側に構築されつつあるのを感じる。その世界がひとつの形を為したとき、私はその世界にひとりで浸ることを選ぶのか、それともやはりそれを言葉で表し誰かと共有することを選ぶのか。
しばらくは仕事のことばかり頭から離れなさそうなので、その境地に至るまではまだまだ遠い気もするけれど。こうやって仕事を言い訳にばかり使うくらいなら、早いところやめてしまった方がいいんだろうな。めちゃくちゃな形で並んでいる心の襞ひとつひとつに意味を見出して世界の城壁を構築するのは、きっとそんなに簡単なことではないはずだ。
5/7
生活を音楽に頼りすぎているのかもしれない。私は音楽家ではないから、ここで言うのは聴き手として、という意味だ。
あまり趣味を広げていくことが得意ではないため、常に片手で数えられるほどのアーティストを繰り返し繰り返し聴いている。そらで歌えるようになって、耳を澄ませばいつでもメロディーが流れ出すくらい曲が身体に染みついても、飽きずに聴く。少しでも作り手が曲に込めた想いや景色に近いところへ辿り着き、それを理解したいのかもしれない。
だから私は、イメージが複雑な曲を好んで聴く。音数が多いとかリズムが難解だとかそういう意味ではなく、まるで森の中にいるみたいな……「森」と括ってしまえばそれはただの森だが、木があって草があって動物が虫がたくさん住んでいて、それらが織りなす混沌の中にゆっくり浸かることができるような、そんな気分にさせてくれる音楽が好きだ。
……というのをフランクに「どんな音楽が好き?」と聞かれて答えるわけにはいかないので、話題に対するアンサーとしてもう少しとっつきやすい言葉がほしいな、でも嘘はつきたくないしな……などと日々葛藤している。