2020-04-10 小さなわにの話 小さなわには勇敢だ。灯ひとつなく真っ暗な道でも、確かな足取りで進む。 小さなわには優しい。わたしが恐ろしさに身をすくませ動けなくなっても、足にそっとまとわりついて励ましてくれる。 小さなわには恥ずかしがりだ。わたし以外の人が現れると、ぴゅっと飛び上がって物陰に隠れる。 小さなわには雄弁だ。口こそきけないけれど、その身ぶりは言葉よりずっと多くを物語る。 小さなわには、いつの間にか消えてしまった。わたしはこっそり、あれが人間だったのではないかと思っている。