鏡に向かって中指を立てるような
おとといのこと
上司に、すごくいいレストランに連れて行ってもらった。
すごくいいレストランなのは分かっていたから、美味しいですありがとうございますって言わなければ!と思い、なにか食べるたびしきりに嬉しそうな顔をするようにしていた。実際とても美味しかったのだけれど。
途中からお腹がいっぱいで苦しかったけれど、残すのは失礼と思い、頑張ってお水で流し込んでいた。
前菜にパン、お魚、パスタ2種、お肉と残さず食べ、最後にピンク色の小さいマカロンが出た。
うわーマカロン大好き!嬉しい!いただきます、と喜んで食べた。マカロンはそんなに好きでもないけど、これならお腹はさほど膨れないし。
デザートもひと段落したのでお手洗いに行き、上司にお疲れさまでしたと言って解散した。
ひとりになってから、帰りの電車に乗るために定期を出そうとして
鞄の中に、ジップロックに詰められたマカロンが入っているのを見つけてしまった。
甘いものは好きじゃない、と上司が食事中しきりに言っているのは聞いていた。
わたしは自分のぶんのマカロンを、喜んで食べた。
わたしがお手洗いに立っているあいだ、きっと好意から、上司は自分の食べ残しをわたしにこっそりくれたのだろう。と思った。
物がたくさん詰まったわたしの鞄の中で、マカロンは見る影もなく粉々になっていた。
なんだかそのときは世の中のすべてが、気持ち悪く感じた。
このひとつの出来事に、わたしが会社で感じる生きづらさがギュッと詰まっている気がした。
そんなに好きでもない食べ物を、喜んで食べる振りをしたからいけないんだろうか。
やりたくない仕事もやらなければならない、と思って頑張っていたら、大して仕事もできないのによくやるわ、と鼻で笑われどんどん雑用を任される、それが本当に正しいんだろうか。