ほろ苦い
1
財布の中身を整理している少年を見た。
レシートを広げたり、また戻したりして忙しそうだったけれど、その中に紛れていたおみくじは畳むことなくじっくり眺めていた。
彼が握っていたのは、吉か凶か?見終わった後やけに丁寧に折りたたんでいたから、もしかしたら大吉かな。
2
大昔のTwitterで見た「電車内の人がみんなスマホ見てるか目を閉じてる。誰も現実見てない」というつぶやきをよく思い出す。
電車に乗ってぼーっと景色を眺めていると、現実から逃避したい人ほど外を眺めるんじゃないか、という気になってきた。
3
飲み屋の出口で、みどり色の飴をもらった。
色が色なので抹茶味かと思って手に取ったが、ただひたすらに甘かったので砂糖味だったのかもしれない。
苦すぎる話を聞いたあとでも、砂糖味の飴は平等に残酷に甘い。救われるような突き落とされるような、妙な気分だ。
4
カラオケに行った。星野源の恋が流れる中マイクを渡されて歌うよう促されて「恋はわかんない」と口に出した瞬間静かになって、なんだか暗示的になってしまった。恋はわかんないよ。