ちどり足
6/25
木曜日。疲れが溜まった。
久しぶりに人から怒られた。そんなに強く言われたわけではないけど、時間が経つにつれて身体に毒が回っていくように力が抜けて動けなくなっていった。
心が弱すぎる。自分の意見を表明して波風立てるのが怖いくせして、私は我が強い。他の人からしたらどうでもいいと思えることにいちいちこだわり、自分の意思を踏みにじる人を恨み、へらへら笑って相手に悟られないように気をつけながらしっかりと根に持つ。私はそうやって生きてきた。
トイレにうずくまりながら中指を立てたり、帰り道でこっそり「バーカ」と呟くことしかできない。私はそういう人間なのだ。私にはそういうやり方しかないのだ。
自粛期間が始まってから繰り返し書いていることではあるが、やはり家にいる時間が長くなると今まで考えずに済んでいたことを考えてしまうな。
忙しさのあまり脇に放っておいた、「私は何者だ?」「私には何ができる?」という問いたち。そんなこと考えない方が健全だという人もいるだろう。「人間暇だとろくなことを考えない」という言葉もある。
その方程式が人類共通だと思わないでいただきたい。ぜひに。
自分が何者なのかを考えずただいたずらに日々を過ごすなんて!それこそ不健全だ。
何があっても心の奥底は揺らがず、自分が本当に求めているものだけを見つめていたい。ただそうすることで、現実において向き合わなければならない大抵のことは魅力や輝きを失ってしまうので注意が必要だ。
自分が求めるものに、自分がどう生きるかの答えがあると信じたい。23歳メンタルの弱い社会人、というのは単なる符号であって私という人間の答えではない、絶対に!
バスがなかったので、街灯が照らす夜の道を歩いて帰った。夜の静謐をイヤホンの音楽で汚しながら歩くのは楽しいな。ついつい鼻歌がもれてしまった。久しぶりに気持ちよく酔っ払っている。
今日の一曲:
Hello,goodbye/ゆうらん船
https://music.apple.com/jp/album/hello-goodbye/1480020763?i=1480020771
緑の少女
6/24
水曜日。瞬きしてるうちに終わった。
悲しいポッキーの写真を撮った。
ほら。
仕事をしながら貪り食っていたら、気づかないうち服の上に落ちていた。行儀が悪すぎる。
ポッキーのアイデンティティはチョコの甘さとプレッツェルのカリカリさが醸し出す絶妙なバランスにあって、だから、このカケラはもうポッキーとは呼べない代物だった。
仕事の予定を確認するためにカレンダーを見ていて、小学校の頃好きだった人の誕生日が近いことに気がついた。10年以上経っても覚えているなんて、向こうからしたら恐怖でしかないだろう。おまじないの類いをたくさん試すので、小さい頃好きだった人の情報の方が頭に残っていたりする。
私は昔からすぐ人を好きになるけど、能動的に誰かを好きになったことはたぶん1,2回くらいしかない。
それ以外は全て「この人私のことでも好きになってくれそう」という邪な感情が育って「好き」になっていったもの。難儀だ。
久しぶりに能動的に人を好きになったかと思えば、その人は一度も話したことのない人だったりする。実に難儀だ。
今日の一曲:
MORE PAST/Maison book girl
https://music.apple.com/jp/album/more-past/1440705197?i=1440705206
文章の映像
6/23
火曜日。変に気持ちだけ焦って何度も泣きそうになった。
左手首が痒いな、とふと見下ろして、つい最近までそこにあったはずの不格好なコブがごく小さくなっていることに気づいた。
このコブ、ただのコブじゃなくて「ガングリオン」という名前があるらしい。強そう。
原因は不明だが、若い女性に頻発するらしい。私は若い女性だったようだ。
放っておけば治ると信じて何もしていなかったが、まさかこんなに突然消え去ってしまうとは。少なく見積もっても3年は私はコブと一緒に過ごしていたはずなのに。
できる原因も分からず、治った原因も分からない。その摩訶不思議さがうらやましい。
橋本紡さん著「流れ星が消えないうちに」の主人公は、とある事情から部屋で眠れず玄関に布団を敷いて眠っている。
初めてその本を読んだとき、私の心の奥底に「正しくない場所で休むと心が落ち着く」という方程式が作られたんだと思う。たぶん。
だから今、私は廊下で、階段で、脱衣所で、そして玄関で、不意に座り込んでしまうのだろう。
全部やめたくなって床に座り込みながら、そんなことを思った。お尻は痛いが確かに落ち着く。
今日の一曲:
TOKYO/THE NOVEMBERS
https://music.apple.com/jp/album/tokyo/1495944698?i=1495944699
布団の神
6/22
月曜日。なんだか時が経つのが遅かった。
バス停からだいぶ離れたところを歩いていたら、乗るつもりだったバスが到着しているのが見えた。別に急いでないしな、とまったり歩き続けていたけど、なかなか発車しない。運転手さんの声がマイク越しに聞こえる。「乗りますか?」
すみません!!!と叫んでそのままダッシュし乗り口に駆け込んだ。皆さん、こんな私なんかのために待たせてしまってすみません。小さくなってバスの座席に座った。
仕事への自信がゼロになってしまった。同期はみんな、勉強に励んでどんどんできることを増やしている。
だからそんなに努力せずぬるい覚悟で仕事していた自分は、取り残されてしまう。当たり前のことだ。
言い訳にしかならないかもしれないが、今の仕事で生計を立てていきたいという思いが全く湧かないのだ。
今週のしいたけ占いを、以下に一部抜粋。
"退屈があり、展開が読め、枠の中に押し込められる。そういう安定が出てくると、自分の中の激しい爆発性みたいなものが出てきちゃうことがあるのです。今のあなたは「将来一軒家を借りて、自分専用屋根裏部屋みたいな住まいが欲しい!」とか、そういう無茶苦茶な目標を立ててみてほしいのです。将来は農家をやるために頑張るとか。"
これまではあまりそう思ったことがなかったけど、これに関しては、ものすごく当たっている!
基本消極的なのに、突拍子もない行動を起こして周囲を驚かせてしまうことがよくある。私はこれを「訳の分からない行動力」と呼んでいる。うーん、これを抑え込むには無茶苦茶な目標が必要なのか。
私の目標、というか夢。下北沢の近くに住むこと。ライブハウスで趣味の合う友だちを見つけること。自分の文章で仕事をして、それをきっかけに人と出会うこと。
無茶苦茶というほどではないかもしれないが、今の私はそのどれからもほど遠い。
自分がどうなりたいか?どうしたいか?一度に全部決断するのは難しいけど、ちょっとずつ軌道修正していきたいな。まだ社会人としてひよっこでいられるうちに。
今日の一曲:
You’ll Never Know/Renée Fleming
https://music.apple.com/jp/album/youll-never-know-feat-ren%C3%A9e-fleming/1440898752?i=1440898761
身を焦がせ
6/21
日曜日。すごく雨が降った。
家を出る時母に「雨降りそうだから折り畳み傘持ってけば」と言われたが、傘が嫌いなのでそのまま玄関を出た。軽くて小さなトートバッグひとつで外出できるのは楽でいい。
久しぶりにショッピングセンター的なところへ出向いたら、人がものすごく多くてびっくりしてしまった。実は自粛していたのは自分ひとりだけで、みんなこの数ヶ月普通に過ごしていたんじゃないか、なんて錯覚に陥るほど。
なるべく早く用事を済ませて、帰りしなタリーズに寄った。幸い混み合っておらず、ほどほどに席が空いている。スタッフがとても丁寧に使用可能な席を案内してくれて、そういえばここ数ヶ月未知の他人とコミュニケーションをとることがなかったなと思い出した。サービスは別に親切心からするものではないが、それでもサービスの枠を超えて親切な人に出会えると嬉しくなる。
飲み物を受け取って、席に座る。私のお目当ては、ここのハニーミルクラテ!
好きな食べ物をひとつだけ挙げろと言われたら小一時間悩んでしまうだろうが、飲み物ならすぐに答えられる。タリーズのハニーミルクラテ。高1のときテスト勉強のためにおそるおそるタリーズを訪れた私を甘やかし、虜にした味。蜂蜜を使っているけどベタベタした味がせずすっきりとした味わいなのがよい。
そんなハニーミルクラテを時折マスクを外してすすりながら、先日代官山蔦屋にて手に入れた星野文月さんの「私の証明」を読んだ。
感想はまだきちんとまとまっていないけれど、ご自身の名前を「とても悲しいことを享受しなければならないような名前」と表現されていたのが印象に残った。
私の本名は至って平凡、少々勝気そうな印象を与える程度だ。名前に見合った、そこそこの暮らしをしていると思う。そんな私はなんのためにこのブログを続けているんだろう、と考えてしまった。頭の中に生まれるイメージや思いを何らかの形で残しておきたいからというのが一番すっきりした答えだけど、誰かに読んでほしいという思いもどこかにある気がする。
そして星野さんのありのままを綴った文章(都合のいいように書いている部分もあると書かれていたが、それを表明できるという事実も含めて)を、シンプルにカッコいい、と思った。このブログは私の生活の5%くらいを汲み取り、そこから文章にできる部分だけをさらに濾し取って書いている。その濾過のプロセスで自分の汚いところを意図せずつまみ出していたな、趣味の世界に来てまでも無意識に自分をよく見せようとしてしまうのは嫌だな。うすうす勘づいてはいたけれどはっきり自覚できた。
帰り、遠回りしてお気に入りの道を歩くつもりだったのに雨が降ってきた。仕方ないなあまっすぐ帰るか、とのんびり歩いていたら急に雨が強くなってきてあっという間にどしゃ降りになった。傘を持って出てこなかったこと、雨が降ってきてもなおだらだら歩いていたことを総合すると自分はアホだなあと思う。でもただ自分が濡れるだけなのでそんなに嫌でもなかった。一匹で行動するのってそういうところがいい。
結局近くのコンビニで傘を買った。
どしゃ降りですれ違う人に聞こえないのをいいことに、大声で歌いながら帰った。
使っている手帳アプリの6/21の予定には「この日までは何があっても生きる」と入っていた。なぜなら今日は、とてもとても好きで応援しているバンドのライブ配信があったから。
部屋を真っ暗にしてスミノフを携え、開始時間を迎えた。この自粛期間を共に耐え抜いてきた曲たちがライブアレンジによってさらなるパワーを持ち、すっかりふやけた感覚器官を叩き起こす。ボリュームを上げる手が止まらない。あまりに楽しくて、一瞬で終わってしまったように感じられた。
こんなに光あふれる音楽を作った人たち、しかもそれを演奏している人たちが実在するなんて。何度もライブに行っているのに未だに信じられない。配信サイトにはコメント欄が用意されていたけれど、言葉を使うより目の前で力いっぱい拍手する方がよっぽど感動を伝えられる気がした。この気持ちを伝えるのに数行だけでは、とても足りない。もどかしい。
私の身体はライブによって生かされているのだ、とはっきり思い出せた。とてもいい一日だった。
今日の一曲:
台風/ナツノムジナ
https://music.apple.com/jp/album/%E5%8F%B0%E9%A2%A8/1469540163?i=1469540441
水の形
6/20
土曜日。最近あまりにだらしないので、時間割を作って過ごした。
ベーコンを「塩漬け肉」と呼ぶと突然ロマンチックになる。昔「ドリトル先生」シリーズが好きで読んでいたけど、確かそこに塩漬け肉という言葉が出てきたな。実写映画のCMを見たけれど、たぶん塩漬け肉は出てこないだろう。なんてことを考えているうち、昼食を食べ終わった。
食べた後はいつも眠くなってしまうので、食後の勉強は控えて映画を見ることにした。
その結果映画から得た感情に圧倒されてしまい、しばらく動けなくなる。時間割を考える時、良い映画を見た後の私は大抵こういう状態になるということを考慮に入れておくべきだった。
しばらく経って感情の渦から抜け出し、ようやく勉強を始められた。
大人になればなるほど勉強は楽しくなるものだと思っていたけど、そうでもない。私が学びたいことややりたいことは、今やっている仕事や勉強の中にはたぶんない。でもやりたいことがどこにあるのか分からないので、仕方なくそのまま現状維持。
夜ご飯後にも勉強するつもりだったけど、お腹が痛くてそれどころではなくなってしまった。寝転がってTwitterを眺める。これが正しい休日。
今日の一曲:
blooming in the morning/SPOOL
https://music.apple.com/jp/album/blooming-in-the-morning/1450790211?i=1450790339
だるまさんが転んだ
6/19
金曜日。終わりが近づくにつれてにやにやが顔に張り付いて取れなくなった。
職場が完全に見えなくなるまで歩いてから、5歩だけスキップした。何年ぶりだろうか。アスファルトを強く蹴る感覚が懐かしかったけど、やりすぎると靴の裏がすり減りそうだ。
私は第2次たまごっちブームと共に小学校時代の前半を過ごした。当時は何よりもたまごっちが好きで、休みの日は首からじゃらじゃらたまごっちをぶら下げて街を闊歩し、授業中にもキャラクターを落書きしてばかりの子どもだった。
中でも好きだったのは、くちぱっちというキャラクターだ。緑色のそらまめみたいな身体をしていて、大きなくちばしがチャームポイント。いつでものんびりしていて、マイペースな性格。
小さい頃はこの「マイペース」の意味が分からなくて、漠然と「私もマイペースになりたいなあ」と思っていた。私はその時プリキュアやセーラームーンではなく、くちぱっちになりたかったのだ。
すっかり大人になってしまったが、今も私の思うことは変わらない。周りのことなんて気にせず、みんなに優しく、温泉が大好きなくちぱっちになりたい。
今日の一曲:
天体/ナツノムジナ
https://music.apple.com/jp/album/%E5%A4%A9%E4%BD%93/1206729284?i=1206729286